嫌いだった。
BOOWYも吉川も。
ただチャラチャラした奴だと思っていた。
少なくとも80年半ばの俺の目にはそう映っていた。
89年だっただろうか、Complexが世に出た。
アルバムを聴いた。おそろしくPOPだった。
単純明快にPOPだった。
BOOWYでも吉川晃司でもない何かつきぬけたものがそこにあった。
「やられた。」と思った。
当時演っていたハードロックの可能性に限界を感じていた俺の頭に、
BeMybaby‥がぐるぐるとこだましていた。
いきさつはよく覚えてないが、
ほどなくComplexのコピーバンドをやることとなった。
当時、俺はギターを弾いていたが、
布袋のスタイルがどうも性に合わなくて、いや無論難しいという面もあり、
独自の解釈で弾き倒した記憶がある。
その頃から、
BOOWYや吉川に対する変な偏見は薄れていった。
特に吉川に対しては、妙にあか抜けない部分が気に入り、
ファンとまではいかないが、
「わりと好き」と言うまでになった。
それから15年余りたったある日、
盟友senna(Tanaka)氏から、
「バンマス、こういう企画があるので歌ってほしいんですが‥」
と、もちかけられた。
「はぁ、まじぃ?」
「まじです。」
「そんな、いくら嫌いじゃないといっても人様の前でびぃまいべいべ〜だなんてやってられないよ(笑)」
「いいえやってください。」
「まじすか?」
「まじです。」
氏のただならぬ熱情を感じ、
「やるとしたら他のメンバーは誰なのよ。」
と、うかぬ顔でプロジェクトの青写真を訊いた。
「実はですね‥」
氏がめずらしくアツく語りだす。
全貌を聞き終わった時、
真意が見えた。
「そうか。Complexか‥。」
「そう。そういうことです。」
そうなのだ。
我々beat-upとKoba率いるfreeDriveとの華麗なる複合体、
すなわちComplexなのだ。
「BOOWYまつりと銘打ってはいてもComplexは避けて通れません。
そしてそれは我々がやるべきなんです。」
「‥‥わかった。やろう。でもやるからには喰うよ、他のバンド。」
「その意気です。」
氏は大きくうなずいた。
かくしてBeatDriveは走り出した。
走り出さなきゃ始まらない。
そんなペースじゃ意味がない。
どこかで聞いたようなフレーズを地で行くようにリハーサルを行っている。
なぜ今ごろ人様の前でびぃまいべいべ〜なのか
その答えを7月26日に知らしめるために。